ミシガン大学教授で感情コントロール学の第一人者でるイーサン・クロス博士(Ethan Kross)はその著書『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』(シフト:あなたの感情を管理する、感情があなたを管理するのではなく)で、感情をいかにうまく自分の望ましい状態にシフトさせていくかについて、様々な方法を述べています。その方法の一つとして「比較をうまく活用すること」があります。
他の人と自分を比較してしまうことは、現代社会において避けられないでしょう。容姿、学歴、職歴、社会的立場、パートナー、住んでいる場所や家、子供の学校まで、果てしなく比較対象はあります。
しかし、他の人と比較することは、人間の脳の基本機能として備わっているのです。人間の脳は、人との比較により自分の社会における立ち位置を認識し、自分の足りない点を理解し、改善しようとします。この比較機能は、原始の社会では特に重要でした。
ですが、現代社会においては、他人との比較があまりにも蔓延しています。現代はSNSで簡単に他人との比較ができてしまうことが大きな原因です。
他人のSNSを見て自分を比較し、ハッピーな気分になれるならまだしも、たいていの場合、失望、自己嫌悪、怒り、嫉妬などのネガティブな感情を頂く傾向にあります。
アメリカで、37729名のFacebookユーザーを対象に調査したところ、22%の対象者がFacebookを見ることで他の人と自分を比較しネガティブな感情を抱き、そのネガティブな感情は1日~数日続くという結果が出ています。
他の人との比較は、ネガティブな感情を生みやすい。しかしながら、比較は人間の脳の基本設定なので、やめることはなかなか難しい。
そこで、他の人との比較を、自分を勇気づけるために活用していきましょう。
比較のポジティブな活用例と一つは、「I can do, too」です。世の中には、戦争や自然災害や政治的弾圧など大変な経験をしながらも立ち直り、自分の目標を見失わずに生きている人達がいます。彼等彼女等が恐ろしい経験をしながらも前を向いて生きていけるなら、自分だって絶対できるはずと「I can do, too」(私だってできる)と、自分を励ますことができます。
もう一つの比較のポジティブな活用例とは、嫉妬やねたみの解析です。AさんのSNSを見て嫉妬を感じたら、どうして自分は嫉妬を感じたのかな?と解析してみます。Aさんがかわいいファッションをしているから。Aさんがスタイルがいいから。Aさんがメイクがうまいから。嫉妬するということは、自分もそうしたい、そうなりたいという願望があるということです。嫉妬で終わるのではなく、自分ができることを真似してみましょう。Aさんのかわいいファッションがうらやましいなら、同じ服は買えないにしても、かわいいと思えるファッションを自分の手持ちの服で真似してみましょう。Aさんのスタイルがうらやましいなら、ダイエットや運動を始めてみましょう。Aさんのメイクがうらやましいなら、Aさんのメイクを真似してみましょう。
嫉妬を、自分を変えるための原動力に活用してみましょう。
他の人との比較を、ネガティブな感情を抱く原因にするのではなく、自分を変える、改善する、励ますきっかけに使えれば、必ずしも悪い行為ではないのです。
※Ethan Kross著『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』を参考にしています。