ミシガン大学教授で感情コントロール学の第一人者でるイーサン・クロス博士(Ethan Kross)はその著書『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』(シフト:あなたの感情を管理する、感情があなたを管理するのではなく)で、感情をいかにうまく自分の望ましい状態にシフトさせていくかについて、様々な方法を述べています。
その方法の一つとして「IF/THENプランをたてておく」があります。
アメリカ軍隊の中でも精鋭を謳われるエリート中のエリート、NAVY Seals(ネイビーシールズ)。ドラマでもお馴染みの部隊です。彼らは中東に派遣されて人質救出作戦を遂行したり、テロリストを逮捕したり、困難度が高いミッションを実行しています。彼らは、ミッションを遂行する前に、作戦にあたって遭遇するかもしれない問題や障害をすべて洗い出します。そして、問題が起こった時どう行動するかというシナリオを3つ考えます。戦場では不測の事態が、いつ、どのような形で起こるのか、わかりません。その未知のリスクに対して冷静に、論理的に対処できるよう、幾つものシナリオを想定して、その時自分はどう行動するのか、イメージしておくのです。これはIF/THENと呼ばれる準備です。IF(問題や障害)、THEN(どう行動するか)のセットを、幾つも検討しあらかじめ用意しておくのです。
ネイビーシールズではない私達も彼等のIF/THENは日々の生活で活用できます。
- もし、会議で自分の提案に反論されたら、どう行動するか?
- もし、試験に合格しなかったら、どう行動するか?
- もし、嫌いな同僚と職場で会ったら、どう行動するか?
何も準備しなければ、感情のままに、次のような行動を取るかもしれません。
- もし、会議で自分の提案に反論されたら→相手に大声で言い返す。泣き出す。
- もし、試験に合格しなかったら→やっぱり自分は無能だと思い、ヤケ酒を飲む。
- もし、嫌いな同僚と職場で会ったら→無視をする。
でも、IF/THENで自分がどう行動するか決めておけば、その事態が現実になっても、あらかじめ決めておいた行動にスムーズに移れます。
- もし、会議で自分の提案に反論されたら→まず意見をくれたことに感謝して、反論の理由を冷静に尋ねる。
- もし、試験に合格しなかったら→友人を誘って反省会をして、何が足りなかったのか検討してみる。
- もし、嫌いな同僚と職場で会ったら→とりあえず、笑顔で挨拶だけはしてみる。
IF/THENをあらかじめ準備しておくことで、嫌な出来事に遭遇しても、感情的に行動するのではなく、自分の用意したシナリオ通りに行動できます。
自分の感情をうまくコントロールして対処できたとなれば、自分に自信が持て、自己肯定感が高まります。
もっとIF/THENを実践してみようと思うようになります。
IF/THENの類似タイプとしてWOOPがあります。
「年末年始スペシャルワーク⑲ WOOPを試してみましょう。」で紹介していますので、参考にしてみて下さい。

WOOPとは、Gabriele Oettingenさんが著書「Rethinking Positive Thinking」の中で提唱した方法です。
think about your Wish
the best Outcome
potential Obstacles
if/then Plan
から大文字部分をとってWOOP(ウープ)です。
自分がどうしたいか、どうなりたいのかを明確にし、どうなれば自分にとって最も望ましい結果かを想像します。その結果に到達するまでに生じるかもしれない問題や障害を考えます。そして、その問題や障害に遭遇したら、どのように対処するか方法を考えておきます。
問題や困難に直面してから悩んだり、困ったりするのではなく、あらかじめ対処法を考えておくことにより、感情的に対応することが避けられます。
※Ethan Kross著『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』を参考にしています。