ミシガン大学教授で感情コントロール学の第一人者でるイーサン・クロス博士(Ethan Kross)はその著書『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』(シフト:あなたの感情を管理する、感情があなたを管理するのではなく)で、感情をいかにうまく自分の望ましい状態にシフトさせていくかについて、様々な方法を述べています。
その方法の一つとして「Respond, don’t react」があります。
Respond(リスポンド)とReact(リアクト)は和訳すればどちらも「反応する」と訳せますが、2つの意味は微妙に異なります。
Respondは、意識的に、建設的に反応を返すこと。
Reactは、反射神経的に、感情に突き動かされて反応すること。
Reactの方は無意識で、Respondの方は意識的なのです。
怒りや不安や心配などのネガティブな感情を起こさせる出来事に遭遇した時、Reactの方で瞬間的に反応すれば、大声を出す、売り言葉に買い言葉で反論する、逃げる、無視する、泣き出す、あるいは自分を罵倒するなどの反応になってしまいます。
一方、Respondの方で反応すれば、一歩引く、時間をおいてから反論する、根拠を示して自分の意見を述べる、相手に冷静に質問するなどの反応になります。
職場の後輩が大事な会議に遅刻してきたとします。大事な会議だと前もって伝えてあったのに遅刻してきた後輩に、あなたは腹が立ちます。
Reactの反応であれば「何してるんだ!」「たるんでいるぞ!」とその後輩を叱り飛ばします。
Respondであれば、その後輩に腹が立ちながらも、もしかすると遅刻せざるを得なかった理由があるのかもしれないと思い、会議の後で話しましょうとその場では後輩に伝えて、会議後に遅刻の理由を聞きます。その理由が寝坊や会議を忘れていたということならば、その後輩を個室に呼び出して注意します。しかし、出かけに子供が具合が悪くなったなどのやむをえないと思われる理由があれば、次回からは遅刻する際には連絡するように諭して終わることもできます。
どちらが感情をうまくコントロールしている反応か、一目瞭然ですよね。
職場での態度は、ことさら、感情をコントロールしたものであることが望ましいのです。
ネガティブな感情が湧き上がるシチュエーションに遭遇しても、反射的にReactで返すのではなく、Respondで返す、そのためにはどうする!?と自分に問うてみましょう。
繰り返しているうちに、ReactではなくRespondが身についていきます。
※Ethan Kross著『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』を参考にしています。