ミシガン大学教授で感情コントロール学の第一人者でるイーサン・クロス博士(Ethan Kross)はその著書『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』(シフト:あなたの感情を管理する、感情があなたを管理するのではなく)で、感情をいかにうまく自分の望ましい状態にシフトさせていくかについて、様々な方法を述べています。
その方法の一つが、プルースト効果です。
プルースト効果とは、フランスの作家、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』から名付けられたものです。『失われた時を求めて』の主人公が、マドレーヌを食べた時にその香り、味に刺激されて、過去の記憶が蘇るシーンによります。
クロス博士は、香りは、特に感情を刺激する強い効果があると主張しています。
そこで感情をコントロールするために、自発的に香りの効果を使ってみることを勧めています。
たとえば、コーヒーの香り。コーヒー好きな人にとっては、コーヒーの香ばしい香りをかぐと心が落ち着くことがあるでしょう。
あるいは焼きたてのパンの香り。その匂いをかぐと、楽しさがこみあげてくる人もいるでしょう。
南瓜の煮つけの匂いを嗅ぐと、子供時代の日々が甦り、郷愁をそそられるという人もいるでしょう。
香りが私達の感情に及ぼす効果は軽視できません。
落ち込んだり、いらいらした時こそ、プルースト効果を使って、上手に感情を心地よい方向にシフトさせましょう。
前述のように、コーヒー好きな人は、いらいらしている時にゆっくりコーヒーを淹れて、その香りをかぐと、気持ちを落ち着かせることができるでしょう。
悲しい気持ちでいる時は、華やかな花の香のオーデトワレを自分にふりかけてみましょう。百合や薔薇の香りに包まれると、気持ちが明るくなる効果があります。
心配事があって鬱々としている時は、フレッシュミントやレモンのアロマオイルをハンカチにたらして、その香りをかぐと、気分がすっきりして気持ちを切り替えやすくなります。
また、気分が落ち込んだ時は、おいしいパン屋さんに出かけて、焼き立てのパンの香りをかぎ、焼き立てのバゲットを買って歩いてみましょう。パンの香りをかぐと、気持ちが明るくなってくる人が多いのです。
このように、香りを意識的に自分の感情をシフトさせるために使ってみましょう。
女性ならば、身につける香水、オーデトワレを数種類用意して、その時に望む気持ちに合うものを選んでつけてみましょう。
プルースト効果は、昔も今も有効なのです。
※Ethan Kross著『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』を参考にしています。