ミシガン大学教授で感情コントロール学の第一人者でるイーサン・クロス博士(Ethan Kross)はその著書『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』(シフト:あなたの感情を管理する、感情があなたを管理するのではなく)で、感情をいかにうまく自分の望ましい状態にシフトさせていくかについて、様々な方法を述べています。
その方法の一つが、違う言語で考えることです。
過去の失敗をくよくよ考えて憂鬱になったり、未来のことを考えて不安になることは誰にもあると思います。そのような時、心理学者はReframinhg(リフレーミング)、捉え直しを勧めます。物事を違う視点からとらえ直し、一見悪い出来事に思える事でも、見方によっては自分にとってメリットになることを見つけようとすることです。
これまでとは違う視点から物事を見てみようと。
しかし、現実的には、違う視点を見つけることは難しく、従来の視点に固執するケースがよくあります。
そのような場合は、母国語ではない言語で物事を捉え、表現してみましょう。
日本人であればたいていは母国語が日本語でしょうから、英語やフランス語や韓国語など、自分が学んだ、あるいは学んでいる第二言語で、物事の捉え直しをしてみましょう。
感情と母国語と深く結びつています。母国語の言葉で感情を表現することが日常ですから、仕事で失敗すれば落胆、友人と口論になり怒る、ライバルに負ければ嫉妬、などのように、感情を言語ですぐに表すことが可能で、言語で表すと更に感情が強化されます。
この母国語と感情の強い結託を壊すために、第二言語で物事を表現してみましょう。頭の中で考えてもよいですし、口に出してもよいですし、紙に書き出してもよいでしょう。
第二言語を使うことは、論理的な思考を必要としますし、感情とは違う脳の回路を使います。そして冷静さを取り戻させます。これをForeign Language Effect(外国語効果)と心理学では呼びます。第二言語で物事を捉えることで、感情との間に距離を作ることができます。
「仕事で失敗して落胆」を英語で表現しようとすれば「I was discouraged by a failure related to my work」となるでしょうが、この英文を考える時点で少し冷静になるはずです。
「友人と口論になり怒る」ならば、「I am angry by argument against my friend」と表現できますが、「怒る」の英単語はAngryかFuriousかUpsetかOutragedか、様々です。Angryと使ったなら、怒りでもそれほど激しい怒りではないことになります。
このように、ネガティブな出来事により起こった感情を、第二言語で表現することで、感情の渦から自分を引き離して、理性的な自分にシフトさせることができますので、外国語効果を利用してみましょう。
※Ethan Kross著『Shift: Managing Your Emotions–So They Don’t Manage You』を参考にしています。