生きていく上で、気分が落ち込み、自分自身に失望したり、自己嫌悪に陥ることは誰にでもあります。落ち込みと人生はセットといってもよいくらいです。
落ち込むこと自体は避けられないとしても、落ち込みから立ち直る方法を身に着けていけば、ダメージを小さくすることができますし、立ち直りも早くなります。回復力を鍛えていくのです。
このシリーズでは、Sue Varma氏の著書『 Practical Optimism: The Art, Science, and Practice of Exceptional Well-Being』を参考に、落ち込みから立ち直る方法を紹介していきましょう。
11個めの方法は脱モンキーマインド。猿の心理から抜け出すことです。
モンキーマインド(Monkey Mind)とは、猿のレベルの脳に支配された心理を指します。つまり人間になる前の原始的な脳です。
このモンキーマインドは、人間である私達の脳の中に埋め込まれており、私達はたびたびモンキーマインドに振り回されています。
落ち込んだ時は、自分がモンキーマインドに支配されていないか?と、チェックしてみましょう。
モンキーマインドの特徴は認識や理解に歪みがあり、次の3つの思考に心が囚われることです。
- 過去に囚われる:過去の出来事を何回も振り返り、後悔している。過去の反芻。
- 未来に囚われる:まだ起きていないことを、もし〇〇になったらどうしようと脅える。
- 比較に囚われる:他人と自分を比較して、自分が劣っていると落ち込む。
自分で作った妄想の中に自分を閉じ込めて、落ち込むことを繰り返す。これがモンキーマインドの典型です。
例えば・・・
- 過去に囚われる:昔の恋人との破局をずっと引きずり、いつまでも悲しむ。
- 未来に囚われる:就職できなかったらどうしようと面接も受けていない段階から不安。
- 比較に囚われる:美人の友人A子の顔と自分の顔を比べて落ち込む。
心がモンキーマインドになっている時は、今、現在にフォーカスしていません。もう変えようがない過去の出来事をくよくよ考えたり、まだ起きるかどうかわからない未来をあれこれ想像して心配になったり、自分がA子になれるわけでもないのに非現実的な比較をしている。
このようなモンキーマインドは、私達に後退しかもたらしません。落ち込み、不安になり、憂鬱になる。そんな心の牢獄に自分を閉じ込めたまま放置することになります。
モンキーマインドになっている時には、まずは今、現在の時間に集中しましょう。過去や未来や非現実的な比較に心が飛ばないよう、今の時間に足をどっしり下ろすのです。
そのためには、今自分がいるその場で、五感をフル活用してみましょう。
以下のような行動を取ってみましょう。
- 触覚:目の前にあるアイスコーヒーのグラスを両手で触って、その冷たさを感じる。
- 嗅覚:深呼吸して土や木々、花の匂いを嗅ぐ。
- 味覚:イチゴを一粒じっくり味わって食べる。
- 聴覚:窓を開けて、風の音を聞く。
- 視覚:電車の窓から空を見上げ、面白い形の雲を見つける。
過去でも、未来でも、非現実でもなく、今、現在、自分がいる場所で五感をフル活用してみます。すると、船がアンカーを下ろすように、心が今の時間に留まります。
あちこちに飛んでいた思考、ぐるぐると回っていた感情がストップして、今の時間に気持ちを集中させることができます。
そうなると、モンキーマインドから離れることができます。
少し落ち着いてから考えてみれば。
- 過去に囚われる:昔の恋人との破局をずっと引きずり、いつまでも悲しむ。→もう終わったこと。悲しんでいたって昔の恋人が帰ってくるわけではない。
- 未来に囚われる:就職できなかったらどうしようと面接も受けていない段階から不安。→面接もまだなのに、そんなことを心配する必要ない。そんな暇があるなら面接試験の練習をしたほうがいい。
- 比較に囚われる:美人の友人A子の顔と自分の顔を比べて落ち込む→いくら比べてもA子の顔になれるわけではない。せめて、肌をきれいにするために、シートパックをしよう。
と、脱モンキーマインドで、「これからどうする?」と前へ向けて歩き出すことができます。