生きていく上で、気分が落ち込み、自分自身に失望したり、自己嫌悪に陥ることは誰にでもあります。落ち込みと人生はセットといってもよいくらいです。
落ち込むこと自体は避けられないとしても、落ち込みから立ち直る方法を身に着けていけば、ダメージを小さくすることができますし、立ち直りも早くなります。回復力を鍛えていくのです。
このシリーズでは、Sue Varma氏の著書『 Practical Optimism: The Art, Science, and Practice of Exceptional Well-Being』を参考に、落ち込みから立ち直る方法を紹介していきましょう。
17個めの方法は、DRAでコミュニケーション力をアップさせることです。
落ち込んだ時、困った時に、周りの人から助けてもらえると、回復のスピードが早くなります。友人や同僚、家族などに悩みを聞いてもらうと、立ち直るきっかけやヒントを得ることができたり、慰められて心が癒されていきます。
でも、落ち込んだ時に自分が助けてもらうためには、相手との間に健全で信頼できる関係を普段から築いておく必要があります。いつもは相手の相談に乗らないのに、自分が困った時だけ相手に頼ろうとしても、適切なサポートは得られません。人間関係は持ちつ持たれつなのです。
普段から、信頼できる、相談できる相手を作っておきましょう。そのためには、あなたも相手にとって信頼できる、相談できる人である必要があります。
そのためには、DRAを使って、相手の話に耳を傾けましょう。
- D:Detect(ディテクト) 相手の話をじっくりと聞く(自分の意見や感想を挟まずに)
- R:Reflect(リフレクト) 相手に対し共感、共鳴、労わりを示す
- A:Act(アクト) 自分が相手のために何ができるか、助けられることは何かを尋ねる
DRAはアクティブ・リスニングのテクニックの一つで、相手の話を聞くことによって、相手が話すことによって感情をリリースし、適切な助言を得ることができるポイントです。
まずは相手に話させる。そして、相手に寄り添った感想や励まし、慰めを与える。その後で、相手が問題解決に向けて一歩踏み出せるように、自分ができることを尋ねる。このDRAのプロセスによって、相手はとても救われた気持ちになり、あなたを信頼し、感謝すると思います。
あなたが落ち込んだ時も、相手に同じようにDRAで話を聞いてもらいたいですよね?それならば、あなたが相手の相談に乗る時に、DRAを実践しておきましょう。あなたと相手とのコミュニケーション力が高まり、信頼度が深まります。
相手の悩みを聞いて、一緒に誰かを批判したり、悪口をいったりすると、ネガティブな感情が拡大してしまいます。
また、相手が話している途中で、こうしなさい、なぜこうしないのか?、と意見したり責めたりすると、相手は気持ちを十分に開くことができません。
相手のすべてを肯定する必要はありませんが、その相手が傷ついている、落ち込んでいるという事実に対して、「大変だったね」「がっかりしてしまうよね」「悲しいよね」と、寄り添う言葉を口に出して、相手の気持ちをわかっている、感情を理解していることを、示しましょう。
そして、本当に相手のことを思うなら、最後はActで締めましょう。落ち込んでいる相手に対して、自分ができることは何かを聞き、相手も行動に移れるよう促していきましょう。
例えば、上司に叱責されて落ち込んだ同僚の話を聞いて、「大変だったね」と慰めた後、「叱責された原因である仕事のミスを二度としないように、私が手伝えることはあるかな?」と相手に聞いてみる。すると相手は、「その仕事のミスを二度としないようにするためにどうすればいいのか?」というアクションに、心が移っていきます。
あるいは、恋人と喧嘩してしまったと落ち込んでいる友人に対して、相手の落ち込みを聞いた後、「恋人と仲直りするために私ができることはあるかな?」と聞いてみます。相手は結局自分で恋人に言い過ぎたと謝る以外、方法はないと思い当たります。恋人二人の間の問題なのです。あなたは「では恋人と仲直りしたら、教えてね。食事しながら、また話しましょう」と伝えます。
DRAを身に着けることで、あなたの周りの人々は、あなたは信頼できる人、相談しがいのある人と認識していきます。その人間関係は、あなたが落ち込んだ時に頼ることができる相手になるのです。
落ち込んだ時に助けやアドバイスを求められる人間関係を、普段から構築しておきましょう。