ポジティブ心理学の第一者であり、『幸福優位7つの法則』がベストセラーになったショーン・エイカー氏の新作『The Power of Beliefs』。日本語にすれば「信念の力」となります。
Belief。信念。確信。こうだという自分の強い考え、自分が信じていること、とも訳せるでしょう。ここでは「信念」という言葉を使いたいと思います。
エイカー氏はこの著書の中で「Beliefs bend reality」(信念が現実を変えていく)と主張しています。そんなことがあるでしょうか?信じる力だけで、現実が変わっていく?そんな頭がお花畑になったような主張を、科学的根拠に基づいて幸福学を研究するハーバード大学出身のエイカー氏が唱えるとは。
何とも意外な感じがしましたが、この本を読み進めていくうちに、エイカー氏が何を言いたいのかがはっきりしてきます。
「Beliefs are the lends through which our brains process the world and decide on a path trajectory of your future.」
(信念は私達が世界をどう解釈するかというレンズであり、それが私達の未来の軌道を決めていく)
とエイカー氏は述べています。
つまり、どういう信念を持つかによって、世界で起こる出来事の解釈は違ってくる。どういうレンズで世界を捉えるかによって、私達の決断は変わってきて、私達の未来もその決断によって変わっていく。
「信念=どう世界を捉えるかというレンズ」によって、私達の進んでいく軌道が変わっていくので、現実も変わっていくわけです。
赤色のレンズを通して世界を見れば、すべての事象は赤っぽく見えるし、青色のレンズを通して世界を見れば、すべてが青っぽく見えることと似ています。
実はこのことはデータ的に立証されています。
- 自分の仕事に意義があることだと信じている働き手の生産性はそうでない場合よりも31%アップします。
- 自分の仕事に意義があると信じっている働き手はストレスを感じる比率が、そうでない場合よりも23%減少します。
- よいことがきっと起きると信じるセールスマンの売り上げは、よいことなんて起こらないと思っているセールルマンよりも37%多いのです。
ただ、100%ではありません。自分の仕事に意義があると信じるすべての人の生産性がアップするわけではありませんし、ストレスを感じないわけではありません。よいことが起きると信じているセールスマンの中には、売り上げがアップしない人もいます。
信じたからといって、結果が100%保証されているわけではないのです。
しかし、選ぶ方向、進む軌道を変えることはできます。そして、目標に向かって進むことによって、目標に必ずしも到達できないとしても、そこに至る道のりが、私達の人生に充実感をもたらしていくのです。
例えば、肥満症の人が「どうせ何をしても痩せない」「私なんてずっとこのままだ」などという「信念」を持っているとします。そういう「信念」を持っていると、病院に行って肥満症の相談をしようという行動を取りませんし、食べ物に注意もしません。どうせ何をしてもだめだと思っているから運動もしません。肥満症はますます悪化し、他の病気を併発することになりかねません。
一方、肥満症の人であっても「太っている自分を変えることはできるかもしれない」「何か行動を起こせるかもしれない」という「信念」を持てば、病院に相談にいって適切な治療の指示を受けるでしょう。食事の内容も改善したり、毎日ウォーキングを始めるでしょう。モデルのようなスリムな体型にはならないかもしれませんが、1キロ、3キロ、5キロと、体重は減っていく可能性が高いのです。体重が減り始めれば、もっと頑張ってみよう、ウォーキングに加えてスクワットもしてみようと、行動を起こすかもしれません。「自分を変えることはできる」という信念を持つことによって、同じ肥満症を患っている人であっても、向かっていく方向、軌道は、まったく違ってくるのです。
信念を持つ、信念によって現実を、未来を変えていくというアクションは、AIには取れません。人間だけが可能なのです。
このシリーズでは、ショーン・エイカー氏の『The Power of Beliefs』を参考に、「信念」が持つ力を確認し、どのような信念を持てば私達の人生における幸福感や充実感を増やせるのか、そして、そのような信念を持つためにはどうしたらいいのかという方法について紹介していきたいと思います。
※Shawn Achor著『The Power of Belief: How Strengthening Sven Core Beliefs Predicts Greater Success and Better Life』(Crown Currency)を参考にしています。







