心理学博士のJenny Taitz氏はその著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』(ストレス・リセット:あなたの体と心を数分で穏やかにする方法)の中で、ストレスにすぐ対処するストレス・リセットの方法を紹介していますが、加えて、少し時間をかけて繰り返し練習することでストレス耐性を強めるストレス・バッファーの構築する方法も紹介しています。
今回は周囲の人達と対立しないように交渉するDEARMANというワザを身につけてみましょう。
家族、配偶者、職場の上司や同僚など、周囲の人達に、自分の要求や願いを訴えて聞き入れてもらいたい時、ついつい口論になったり、感情的な口調になったりしがちです。そして、意見が対立して、関係が悪化したり、気まずくなったり、言い出した自分を嫌悪したりすることがあります。
だからといって、自分の気持ちや要求を我慢すべきということはありません。
相手に上手に、自分の要求を伝えるワザを学びましょう。それがDEARMANです。
D: Describe the facts(事実を述べる)
E: Expresses how you feel (自分がどう感じているか伝える)
A: Ask for what you want (自分が何を欲しているか伝える)
R: Reinforce/reward what’s in it for the other person (相手にとってのメリットを伝える)
M: Mindful (マインドフルに話す)
A: Act confident (自信をもって堂々と話す)
N: Negotiate as needed (必要ならば交渉する余地があることを伝える)
の頭文字を取って「DEARMAN」(ディアマン)です。
感情的になりすぎて相手と口論になってしまったり、話が要領を得ずに相手に自分の要求が伝わらなかったり、妙にへりくだったり、曖昧模糊とした話で、問題解決に至らなかったり。
家族に対しても、職場の同僚に対しても、自分に要求を伝えて聞き入れてもらうのは結構難しいものです。
そこで、事前にDEARMANを練習しておいて、話すようにしてみましょう。
例えば、Aさんは職場の上司に、家族の世話があるので会社を18時には退社したいことを伝えて了承してもらおうとします。正式な終業時間は17時です。多少の残業はできますが、小さい子供達の世話があるので、18時までがぎりぎり職場にいられる時間です。しかしAさんの職場は急ぎの仕事も入りやすく、同僚19時、20時までオフィスで働いている人が多いです。Aさんとしては、仕事はきちんと終わらせたいと思っていますが、子供が小さいうちは、残業することは難しいと悩んでいます。
この場合のDEARMANを考えてみましょう。
D:事実
Aさんは家族の世話でしばらくの間18時を過ぎる残業は難しいと上司に伝えます。
E:どう感じているか
Aさんは仕事はきちんとこなしたいと思っているし、同僚が残業しているのに自分だけ先に帰ることが申し訳ないと感じている。しかし、子供の世話をきちんとしたいという気持ちもある。
A:自分の要求
残業をしても18時までにしてほしい。
R:相手にとってのメリット
家族の世話をしながら仕事を続ける女性社員の手本になりたい。上司にとっても、ライフワークバランスを大切にする職場環境を整えるという評価になると思う。
M:マインドフル
感情的にならず、自分の要求を冷静に伝える。
A:堂々と話す
卑屈にならない。
N:交渉の余地を示す
終業時刻は17時だが、18時までながら残業しても問題ない。
急ぎの仕事の場合、続きは帰宅後家でやってもよい。
ただ「家族の世話があるから18時以降は残業できない」と伝えるよりも、「R:相手にとってのメリット」や「N:交渉の余地を示す」が一緒に提示された方が、上司はAさんの要求を受け入れやすいはずです。
また、上司はそれまで気付いていなかったであろうAさんの気持ちも、理解できます。上司がAさんの立場を理解しやすくなります。
このようにDEARMANを使って、自分の要求を相手に伝えるようにすると、相手と対立や、感情的な衝突を避けることができます。
人間関係はストレスの最大の要因です。周囲の人との感情的対立を避け、かつ、自分だけが我慢しない状況を作るために、DEARMANで周囲の人達と交渉していきましょう。
※Jenny Taitzの著作『Stress Resets: How to Soothe Your Body and Mind in Minutes』を参考にしています