生きていく上で、気分が落ち込み、自分自身に失望したり、自己嫌悪に陥ることは誰にでもあります。落ち込みと人生はセットといってもよいくらいです。
落ち込むこと自体は避けられないとしても、落ち込みから立ち直る方法を身に着けていけば、ダメージを小さくすることができますし、立ち直りも早くなります。回復力を鍛えていくのです。
このシリーズでは、Sue Varma氏の著書『 Practical Optimism: The Art, Science, and Practice of Exceptional Well-Being』を参考に、落ち込みから立ち直る方法を紹介していきましょう。
4つめの方法はウォーリー・ジャーナル(Worry Journal)を書くことです。
同じような心配や悩みをエンドレスに繰り返していることはありませんか?心理学ではこれをルミネ―ション(rumination)と言います。そのような時には、あえて、不安や心配事を書き出すことで、外に吐き出していきます。ウォーリー・ジャーナルを書くのです。
ポジティブなことや感謝することを書き出すポジティブ・ジャーナルもありますが。ネガティブなことも書き出すことで心を整理できる場合があります。
特に漠然とした悩みや心配事は文字化してはっきりさせることで、その正体を見極めることができる場合もあるのです。
そして、ウォーリー・ジャーナルを書いていくうちに、自分の悩みのパターンが見えてくることがあります。いつも同じようなシチュエーションで、同じように落ち込み、同じように悩んでいる・・・そんな自分のウォーリー・パターンを発見できることがあるのです。
たとえばAさんは職場のプロジェクト・チームに入れませんでした。Aさんの心の中で不安が渦巻きます。上司は私に能力がないと思っている。私はチームに必要ないと思われているのでは。私はやる気がないと周りから思われているかもしれない。私の居場所はこの部署にはないのかも。もしかすると上司に嫌われているのかも。異動させられるかもしれない。
・・・などと、次々と不安や心配が沸いてきます。
ここで、ウォーリー・ジャーナルを書いてみます。Aさんが心配していることを文字にして書き出します。
- プロジェクトのメンバーに選ばれなかった。
- 私は能力不足と思われている。私には能力がないのかも。
- 能力がない私はチームに必要ない人間だと思われているにちがいない。
- 私は評価されていない。でも、能力がないなら、評価されなくても当然だ。
- 上司は私を個人的に嫌っているかもしれない。
- 私はもうこの部署にはいられないと思う。
書くことで、自分の感じていること、考えていることが、はっきりしてきます。漠然とした気持ちを文字にすることで、自分の気持ちから少し離れて、眺めることができるのです。
ウォーリー・ジャーナルを書いたら、それを読んでみます。
そして、事実だとはっきりしていることに〇をつけます。事実とは限らない、はっきり決まっていないことには×をつけます。
そうすると、Aさんが書き出したことのうち、事実だとはっきりしていることは1つだけ「プロジェクトのメンバーに選ばれなかった」という事実だけなのです。
あとは全部Aさんの想像なのです。
Aさんのウォーリー・ジャーナルの中に、確定している事実は1個しかありません。
まず、そのことを認識します。
あとは事実かどうかわからないけれど、Aさんが不安に思っている不明瞭なことばかりです。
では、それらをはっきりさせることは可能でしょうか?その方法を考えてみましょう。
まずAさんができることは、なぜ、自分がプロジェクトのメンバーに選ばれなかったのか、自分に足りないものは何か、上司に聞くことです。
プロジェクトのメンバーに選ばれなかったことにクレームするのではありません。自分としてはやる気があるけれど、今後のために、なぜ、選ばれなかったのか理由を教えてほしいと上司に尋ねます。
上司の答えが「能力がまだ足りない」ということであれば、どういう能力が不足しているかをはっきりさせ、その能力を高められるように努力することができます。
あるいは、上司は「Aさんが抱えている現在の業務が大変そうだったから、今回のプロジェクトからは外した」あるいは「それほどAさんがプロジェクトに参加したがっているとは知らなかった」という、Aさんの能力とは全然関係ない回答かもしれません。
いづれにしろ、Aさんがプロジェクトに参加したいと思っていることは、上司に伝わったわけです。
そして、Aさんがウォーリー・ジャーナルに書いた不安や悩みの大部分は消えていくことになります。
心配や不安で心がふさいできたら、あえて、それを文字化して、ウォーリー・ジャーナルに書き出しましょう。文字化した心配や不安は、少し客観的に読むことができます。
そして、事実か、事実でないのかを見極めることで、心配や不安を小さくすることができます。